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麹(こうじ)
日本酒が好きな方なら耳にしたことがある言葉に
「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造り(さんつくり)」という言葉があります。
これは酒造りの工程の大切さを順に表した格言です。
酒造りにおいて最も重要なのが「麹造り」、次に「酒母造り(酛:もと)」、そして醪(もろみ)を仕込む「造り」といわれます。
現代の酒造りにおいては一麹、二麹、三麹とも言われるほど重要なのが麹造りです。
蔵によって見解は異なるとは思いますが、ある蔵は麹造りが成功すれば酒造りの半分は成功したも同然という蔵もあります。
もちろんそれ以降の酒造りは手を抜いても良いという意味ではありません。(笑)
麹で失敗すると後の工程で挽回できないという意味です。
それほど大切なのが麹造りです。
そして、良い麹を造るために重要なのが、今までお話しした精米、洗米、浸漬などの前処理(まえしょり)と呼ばれる行程です。
さぁ、いよいよ麹くんが誕生しました。
大切に育てた麹くん。
人間と同じでさまざまなタイプがあります。
麹を評価する場合、突き破精型(つきはぜ・若い麹)と総破精型(そうはぜ・老ね麹)の二つの基準があります。
「破精(はぜ)」とは、麹菌の菌糸が白く見える状態をいい、「ハゼる」とか 「よくハゼこんでいる」という表現を用います。
■総破精型(老ね麹)
麹室の中で成長した時間が長く、表面にも内部にも総体的に麹の菌糸が ハゼこんでいるもので、菌糸が多い分、酵素の生成が進んで糖化力(米を糖に変える力)が強いのが特徴です。
■突き破精型(若い麹)
ハゼこんでいるところと、ハゼていないところがまだらになっているが、 米の内部までよくハゼこんでいる麹で、糖化力は総破精型に準じますが淡麗な酒質になります。
ここからは製麹に失敗した麹です。
■塗り破精(ぬりはぜ)
麹米の表面に水分が多くあるため、麹菌が中まで菌糸をのばす必要がないと感じ表面だけに破精が回った状態になっているので力のない麹。
■馬鹿破精(ばかはぜ)
総破精が行き過ぎた・蒸米が柔らかすぎると、破精が回りすぎて指で押すと粒が潰れてしまう麹
つまり外硬内軟な蒸米を造るというのは、蒸米に麹菌をふりかけて、米の表面に麹菌が付着し、麹菌が乾いた表面から水分を求めて内部にぐーっと菌糸をしっかり伸ばして貰うための条件となります。
蔵見学に行く機会がもしあったら、米が全体的に真っ白くなっている麹を見たら「総破精」まだらなら「突き破精」ですねと言うと、蔵の方が「お? この方は詳しいな」と思うかもしれません。
ハゼ込みの違いについてはどちらが優れているというのはありません。
どちらも蔵元が狙った酒質を実現するために「このような麹がほしい」と目標を持って麹を造ります。'
余談ですが、化粧品のSK-IIのCMで「酒造所で働く杜氏(とうじ)の手は美しい」というキャッチフレーズのCMを行っていました。
たしかにそうかもしれませんが、酒蔵で一番手が美しいのは麹屋(麹担当者)の手です。
私も麹室の中で作業をしますが、麹を触ったあとは手がつやつやすべすべになります。
逆に蒸米を広げて冷ます放冷機で手作業で米の塊を細かく砕く作業をすると、手の水分や脂分が風や触った蒸米で失われて手がガサガサになります。(^^;)